紀州に浅野長晟がいた頃の事。
地侍に何某と言う、かつて功名の沙汰のあったものがいて、今は山中に住んでいた。
浅野家では、この何某の武勇に期待し、扶持していたが、
この男、いつしか武技の鍛錬を忘れ、
蓄財に励むようになった。
他人に、それを指摘されると、
「財貨あれば、いつでも、諸道具、人馬ともに集められるわ!」
と、聞く耳を持たなかった。
さて、大坂の陣が起こる。
この男公言していたように、財貨を散じて人馬、諸道具を求め、
ゆゆしい装いで出発した。
ところか、道を進むにつれ一人減り二人減り、所詮金で集めた者達ゆえか、
戦場である大坂に着く頃には、全員逐電し、
残ったのは自分とその馬だけと言う有様になった。
何某、これでは働きも出来ず、かといって紀州に帰るのも面目ないと、
そのまま行方不明になったそうである。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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