石川五右衛門という盗賊は、大小名、諸士群参の日、大坂並びに聚楽の営中に紛れ入り、
諸席に置かれている、重代の宝刀、或いは鋭利の良刀を、自分の鉛刀に代えて帯し退き出た。
このため、すり替えられた者達で心ならずも惰弱の汚名を被り、
歯噛みをして憤る輩数多であった。
このような中、浅野幸長は考え量り、御玄関にて刀を従者に遣わし、短刀だけで営中に登った。
衆人はその才智を嘆美し、これに倣い、皆家従に刀を持たせるようになったため、
石川五右衛門の一計も絶えて、その後営中に紛れ入る事もなくなった。
またこれより、この事が士風となったという。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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