橋本六郎の腰兵糧☆ | げむおた街道をゆく

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慶長の役の時のこと。

蔚山築城に伴い、城外に駐屯していた浅野幸長は、明軍の奇襲を受けた。

何とかこれを防ぎ、
退却する奇襲部隊を追撃した幸長だったが、

この退却は偽装であり、浅野勢は伏兵に囲まれ、窮地に陥った。

浅野勢は、大将の幸長みずから鉄砲を連射し、

槍を振るい反撃したが、あるいは討たれ、あるいは散り、
城の惣構に逃げ着いた時には、幸長に従う者は重臣の浅野河内守と、

徒歩武者の橋本六郎のみとなってしまった。

「ようやく逃げおおせたか。やれやれ、安心したら腹が減ったのう。」
「殿、これを。」

やっと一息ついて飢えを漏らした幸長に、

六郎は腰の袋から握り飯を三つ取り出し、一つは幸長に献じ、
一つは自分で食い、残る一つを再び腰袋に収めた。
 

「おっ、良い物を持っておるではないか。残る一つ、わしにくれぬか?」

六郎の様子を見ていた河内守の頼みに対し六郎は、この重臣を睨みつけて答えた。

「これは、拙者の予備食にござる。

いざという時はこれを食って最後の力を振るい、殿の馬前に果てる覚悟。
貴殿こそ、お家の重職たる身が腰兵糧の用意も無く、どうして戦陣に臨んでおられるのか?
今日、奇襲に敗れたのも貴殿らの、そのような用意の無さゆえではありませぬかな。」

戦後、日本に帰った幸長に河内守は、六郎を己の組下にする事を望んだが、

河内守の心底を見抜いていた幸長は、
ついにこれを許さなかった。

 

 

 

戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。 

 

 

 

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→ 豊臣家武断派の一人、浅野幸長

 

 

 

ごきげんよう!