京にある、その風呂屋の横には、汗をかき過ぎた客が使えるように、
いつも竿に湯帷子や真新しい下帯がかかっていた。
風呂焚きとして二人、垢掻きとして別に二、三人の下男を雇っており、
その他に上がり口に屈強な男を一人置き、
他の下男は脱衣所には入れないようにしていた。
そのため客は安心して裸になり、衣服・荷物を預けて風呂を楽しんだ。
この風呂屋の主人・水庵老人の所には、毎日のように訪ねて来る者があったので、
老人は毎日決まった時間に、訪問客のみならず、客の使用人にも食事を振舞った。
訪問客は、おかげでゆっくりと心行くまで老人との会話に興じた。
また老人は、自分はコタツが嫌いだったが、
「顔を突き合せねば、話も弾まぬ。」
として、炭の火をごく弱くして、
置ゴタツを作らせ、
来客同士が遠慮せず近寄って会話できるようにしたという。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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