山鹿素行といえば、江戸時代の兵学者で、大石内蔵助の師だったりして有名な人。
この人は常々、
「千石以上くれないと仕官しない。」
と豪語するような人だった。
そんな彼が15歳の時、ある人と対談した。
藤堂家に仕えた戦国時代の生き残り・渡辺水庵である。
彼もまた自分の腕に自信のある男で、
「5万石くれなければ仕官しない。ワシにはそれだけの価値がある。」
と豪語していた。
彼らの話は兵法に及んだのだが、なぜか水庵は口篭っている。
対談が終わると水庵は次のように述べた。
水庵「どうか、素行殿の弟子にしてもらいたい。」
素行「あなたのような歴戦の勇士が、いきなりなにを言うのです。
私のような戦場を知らない者に教わりたいなどと。」
水庵「53歳にもなって恥ずかしい話だが、ワシは自分が、
戦場でどのように感じ、どう行動したらよいのかを言葉で説明できないのだ。
だが素行殿の言葉を聞いて初めて自分の行動の意味がわかったのです。
ワシは誓詞など書いたことがないが、弟子にしてくれるなら書いてもいい。」
水庵は一度戦場に出れば鬼神の如く活躍するが、
その直感的行動を理論的に理解・説明できなかったのである。
だが素行の理論的な説明で、初めてその行動の理由を知ったのだった。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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