ある日、とある幕臣が、金に困り、
手持ちの高麗茶碗を、七十両で手放したいと、直孝の元にやってきた。
この幕臣は、直孝に憚ったのか、茶碗と共に小堀遠州の書翰を数冊渡した。
直孝は、承知して、これらを買った。
だが幕臣が帰った後、高麗茶碗を手に取って語った。
「わしはこの茶碗が欲しくて、七十両を払ったわけではない。
あの男の貧窮を助けねばならぬと思ったから、買い取ったのだ。
そもそも、こんなものがなければ、かの者は、こんな目に合わずに済んだのだ。」
そう言うと直孝は、茶碗を庭石目がけて投げつけ、
小堀遠州の書翰も火にくべて燃やしてしまった。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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