おうた子に、教えられ☆ | げむおた街道をゆく

げむおた街道をゆく

信長の野望、司馬遼太郎、大河ドラマが大好きです。なんちゃってガンダムヲタでもあります。どうぞよろしく。

 

徳川家光公の御治世に、

「万事御政道は、東照宮の通りに成されるべき。」

と仰せになられたところ、
 

伊達陸奥守政宗は、
「家康公より、百万石を給わらんとの御書付が有りますが、

政宗としても現在は御代も代わった事でもあり、
それは反故であると存じていましたが、

今度の仰せについて、この御証文の写しを御覧に入れたく思います。」
との御書付を献じられた。

この事は上聞に達し、土井大炊頭利勝を召されて、
「陸奥守に百万石を下すというのは、有るまじき事では無いが、

これはその当時の御謀であり、このような事を取り上げていては、

他家よりもまた、この類のことを願ってくるだろう、いかがすべきだろうか。」
と御尋ねになった。

利勝はこれに、

「井伊掃部頭(直孝)に、御相談されるべきでしょう。」

と言上したため、すぐに掃部頭を召し出され、
これこれの旨を仰せ聞かされたところ、

直孝は承って、伊達家に参り、政宗と対面して申した。

「只今、風説を承るに、今度仰せ出されたことについて、

御先祖(家康)より下された御証文の写しを、

差し出されるとの事ですが、これは実説でしょうか?

不審に思い、罷り越しました。」

と申した。

陸奥守答えて、

「いかにもその通りである。御代も代わった故に、この御書付も反故と存じていたのだが、
今度の仰せ出されにより、御覧に入れるのだ。」

直孝は尋ねた、

「その御証文は御自筆でしょうか?」
「全く、御先祖の御筆である。」
「もし出来るのであれば、それを少しばかり拝見仕りたく思います。」

そのように申したため、政宗は家臣を呼び出し、

御証文の入った筥を取り寄せ、井伊の前に置くと、
直孝は御証文を出して押し頂き、とくと拝見して政宗に対し、
「かような事は御謀であり、貴殿もその事は御存知であるはずです。誠に反故にて候。」

そう言いながら、これを二つ三つに引き裂いた。

 

政宗は、これを見て興醒めして、
「なるほど、左様である。

これはおうた子に教えられ、川を渡る(負うた子に教えられて浅瀬を渡る)と、
申すものであるな。」

と笑われ、種々の饗応あって後に、

直孝は伊達家を出てそれより直ぐに登城して、この趣を報告すると、
家光公はご機嫌斜めならず、利勝も大いに感心したという。

 

 

 

戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。 

 

 

 

こちらもよろしく

→ 井伊の赤牛、井伊直孝

 

 

 

ごきげんよう!