天下の乱の元と、存じました☆ | げむおた街道をゆく

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将軍・徳川秀忠が諸大名を召して、土井大炊頭利勝を以って、

来年、嗣君(家光)に世を譲る旨を発表すると、何れも祝う所に、

井伊直孝一人黙然としていたため、土井利勝は側に招いて、
「どうかしたのか?」と問うた所、

 

直孝は、
「天下の乱の元と存じました。めでたい事とは全く思いません。」

「それはどういう理由か?」

「それについては、大坂の乱のあと。

江戸城の石垣の造営、日光の御造営とうち続いたため、
天下の諸大名は以ての外に困窮しております。

そんな状況でこの上御代をお譲りなされば、
諸大名は、その祝の献上品のため費え多く、

また将軍宣下の饗礼を執り行えば、更に困窮に及んで、
支配下の民を苦しめる以外に、方法が無くなるでしょう。
これによる万民の嘆きは、乱の元であると存じます。」

土井利勝これを聞くと、
「至極の事である。それをありのまま、秀忠公に言上すべきだ。」
そう言って直孝を御次の間に伴い、利勝は御前に進んでしかじかの旨を言上すると、

直ぐさま直孝は御前に呼ばれ、秀忠より、このように言われた。

「汝が申す所は尤もである。

しかし、一旦言い出してしまった以上、止めることは出来ない。
なお、今後も憚ること無くどのような事でも私に申すように。」

ところが直孝は、これに全く納得しなかった。
「直孝の只今の旨、然るべからずと思召したのであれば、それでよいでしょう。
しかし、臣の言葉を尤もと聞かれたのに、用いられないのは、仰せとも思えません!」

これに秀忠は、暫く言葉もなかったが、ここで利勝が申し上げた。
「私は既に年老いました。

しかし彼のような壮年の者がこのように直言申し上げるというのは、
誠に天下泰平の元であります。

明日、大名を召され、掃部頭(直孝)が申す旨尤もなるにより、
昨日の事は止められると言うことを仰せになるのが、

然るべきと考えます。」

これに、秀忠は彼らの諌めに従う事にした。
直孝は、

「私が申す旨を用いて頂き、忝く思います。」

と謝して退去した。

この事について当時の人々は、秀忠が諌めを入れたこと、

直孝の直言、誠に君臣とも美を為し善を為したと語り合ったという。

 

 

 

戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。 

 

 

 

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→ 井伊の赤牛、井伊直孝

 

 

 

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