片桐且元の従士である、日比半右衛門は、武功ある者であった。
大坂冬の陣の時、大野の属兵・米村市之丞と闘ったが、
半右衛門の嫡子・半十郎が横から出てきて、
父と入れ替わって米村と斬り合った。
半右衛門は、勝負を見物しつつ、
「討つも討たれるも武士の習い。踏み込んで勝負をいたせ。」
と言うと、半十郎は父の言葉を力にし、米村の肩先を斬った。
一方、米村も半十郎の左の頭に切りつけ、
弱るところを斬り伏せて半十郎の首を取った。
息子を討たれた半右衛門は、米村を引っ立てて、
「今貴殿を討つのはたやすいが、その方にも父があり、
今われが感じているように不憫に思うことだろう。
その方一人を討とうが助けようが戦の流れは変わらぬのだから、
早く帰って恩賞に預かられよ。」
と矢立を取り出し、半十郎の姓名を書きつけて与えた。
城内に馳せ帰った米村がことの次第を報告すると、
秀頼公も感動し米村に黄金十枚を褒賞として与えた。
これを聞いた人々はみな、
「半右衛門の計らいは、勇ありて情け深い。」
と感嘆した。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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