柴田勝家の軍が、加賀一揆勢との戦いを、繰り広げていた頃のこと。
加賀国二曲という城、現在は別宮と呼ばれているが、
この地は吉原二郎兵衛という者の領地であった。
ここに一揆の者共集まり、夜中にこれを攻めた。
しかし城方はよく持ちこたえ、敵勢を押し返そうかという時分、
城中の高櫓の上から鉄砲を撃たせていたが、
ここの足軽大将は、腕に火縄をかけた状態で鉄砲を撃たせていた。
そして火薬を継ぐ時、火薬箱に火が入り、高櫓は爆発しはじけ飛んだ。
城中は衝撃と黒煙で取り乱し、寄せ手はこれに利を得て、
夜明け頃ついに城を乗っ取り、
吉原に腹を斬らせ、城内の土蔵を開けて尽く略奪に及んだ。
このような時に、二曲落城を知った千代城の拝郷五左衛門(家嘉)が駆けつけ、
一揆勢を攻め立てた。
一揆勢は略奪の最中の、突然の攻撃に驚き、略奪物を捨てて城の後ろの切所へと落ちた。
拝郷は逃げる一揆勢に追撃をかけ、大いにこれを破った。
ところがこの一揆勢の中に一人、才覚のある者がいて、
棒に白手ぬぐいを結びつけて山に立て置き引き上げた。
拝郷はこれを見て、伏兵があると判断し、長追いに及ばなかった。
その間に一揆勢は危機を脱して、つづら折りの山路を退くことが出来た。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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