ある日、牧野康成の下に、刀を売ろうする商人がやって来た。
康成は、じっくり観察すると、
「素晴らしい。これは良く切れそうな刀だ。」
どうやらその刀は業物であったため、これを購入した。
その後、家康が家中の名刀の切れ味を試すために試し切りを行った。
康成も、件の刀で試し切りに参加することになった。
そして刀を購入した経緯を説明し、いよいよ試し切りを行うことになった。
自らの眼で業物と判断しただけに、もしここで切れなければ恥をかくことになる。
緊張の余り康成は、しばし目を閉じた。
「私の目利きの通りに切れてくれよ。」
と念じ、刀を下ろした。
果たして試し切りは成功した。
土壇まで切入り、斜めの様子でもない。
康成の喜ぶ様子を見た家康は大いに笑い、
その刀を「目眠刀」と名付けるよう命じた。
康成が目を閉じた姿が眠っているように見えたためであろう。
この刀は代々家宝とされた。
なお、この刀は保昌五郎貞吉の作である。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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