加賀前田家の家臣・富田重政は、
後に”名人越後”と呼ばれることになる中条流の達人である。
ある日、前田利常は、重政を呼ぶと、いきなり真剣を抜いて、
「無刀取りと言うものがあるらしいが、どのようなものか見せてみよ。」
と無茶を言い出した。
すると重政は、慌てず騒がず、
「これは秘伝につき余人に見せられませぬ。
まず向こうの障子から覗く小姓をお下げください。」
と答えた。
言われて利常が障子の方を振り向いた瞬間、重政が素早く刀をもぎ取って、
「これが無刀取りでございます。」
と答えたとか。
……ちなみに、中条流の無刀取りは実は白刃取りでもなんでもなく、
「相手を押し倒し、組み敷いて腕をねじり上げて刀をもぎ取る。」
戦場の組打ちの技であったとか。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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