武田信玄の12人の使番は、
「白地に黒のムカデ」
を旗指物とするきまりで、彼らは、
「ムカデ衆」
と呼ばれた。
しかし、ムカデ衆の1人・初鹿野伝右衛門だけは、白地の旗指物を用いていた。
それを見た信玄は、
「ムカデ衆の中で白地の旗を指している奴は誰じゃ?
なに、初鹿野伝右衛門じゃと。
またアイツか。
伝右衛門を呼び出せ!」
とご立腹の様子。
「貴様は、ムカデ衆は、”ムカデの旗指物”とする武田家の軍法は知っておろう。
なぜ、軍法違反したのじゃ!」
それを聞いた伝右衛門は、
「ちっとも軍法には違反してません。」
と言い旗指物を信玄に見せた。
なるほど、旗指物の隅っこに小さなムカデが描いてある。
これを見た信玄は、
「ずいぶん小さいな。なぜ、他のムカデ衆みたく、大きなムカデを描かないのだ?」
伝右衛門は、
「他の人と同じムカデを描いたのでは、戦場において、
それがしの手柄が他の人とまぎれてしまいます。
ゆえに、わざと小さなムカデを描きました。」
と平然と答えた。
信玄は、それを聞いて大笑いしたという。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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