ある時、伝右衛門は、誤ってお茶坊主の腰の物を踏んでしまい、
怒ったお茶坊主に扇子で額を、
「ぱしっ」
と叩かれた。
武辺で鳴る伝右衛門は、なぜか茶坊主風情に畳にひれ伏し、
「申し訳ない。」
と謝り、何事もなく済んだ。
これを見た朋輩らは、
「初鹿野は、武勇の者というのは偽りよ。」
と笑い合った。
これを聞いた伝右衛門は、
「我が命は、主君のご用に立てるが命。
茶坊主と差し違えても手柄にならず、切り捨てても誉れにならない。
もし油断して討たれた時は損恥よ。
戦場での敵には堪忍できぬが、
普段のでき事はできるだけ堪忍なることが肝要よ。」
と笑ったという。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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