今川上総介氏真が、小田原を逃げ出て浜松に来たると、
神君(徳川家康)は旧好を思し召して懇意に御扶助なさったが、
氏真は、
「近頃の都には歌や連歌、蹴鞠の朋友も多いし、退屈の慰みにもなるだろうか。」
と京洛の方に徘徊し、今度は遊びに飽きてまた浜松に帰ってきた。
神君はなおも旧好を捨てなさらず、氏真は今は雲水に任せて浪々としているのを、
このように懇意にもてなしなさり、天正7年(1579)10月9日、
浜松城へ氏真を御招きになり、善美を尽くして饗応なされた。
御仁心ありがたきことなりと、氏真は申すまでもなく、
見聞きする者で感嘆しない者はいなかった。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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