天文21年の正月のこと。
この頃、水谷蟠龍斎(正村)の領内では、正月に村々の百姓の大人衆が、
城へ御礼に上がることが嘉例であった。
彼らには供餅一重、並びに酒食が出され、終日の御馳走であった。
この時、百姓たちがこのように言った。
「今年は餅が、一回り小さいようですな。」
これを聞いた蟠龍斎は、
「餅の大小はお前達次第だ。
年貢さえ多く上がってきたならば、餅を富士の山ほどにして取らせるぞ。」
百姓たちはこれに、
「我らは下郎ですから、上を恐れずむさ苦しい事を申してしまいます。
それを怒っても当然なのに、
殿は狂を散じる御意をなされ、却ってご機嫌よろしくされています。
殿は不思議なるお生まれですな。」
そう申すと、お互い大いに笑ったとのことである。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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