板倉勝重は、老齢になったので京都所司代を辞し、後任に息子・重宗を推薦した。
幕府もそうしようと思っていたのだが、重宗は、
重宗、
「私のような凡人には務まらないでしょう。
何か失敗して、幕府の御威光を損なうような事はしたくないので辞退します。」
老中、「勝重のお墨付きだから大丈夫だろう。」
重宗、「父の推薦でも、自信がない事はできません。」
と固辞したのだった。
そこで老中は、重宗の友人の安藤直次に説得させる事にした。
直次、
「そこまで固辞したなら無駄だと思いますが、やるだけやりましょう。」
と言って直次は引き受け、重宗を訪ねた。
重宗は所司代を断ったものの、実は悩んでいたので直次を歓迎した。
重宗、「何か私に用事があるのか?」
直次、「いや、近いうちに紀州に帰るから挨拶に来ただけ。」
重宗、「おおそうか。(またまた~本当は所司代の件だろう)」
しかし直次は世間話ばかりで、京都所司代のきの字も言わない。
重宗(早く所司代の話しろよ…イライラ)
直次、「じゃあもう帰る。」
重宗、「エッ!? ちょ、ちょっと待て! 最近の私について何か聞いてるだろう!」
直次、「ああ聞いてるよ。お前に所司代は無理だ。」
重宗、「(ホッ…)やっぱり君もそう思うか。私には才能がないからな。」
直次、「いや、お前は腰抜けだからだ。」
重宗、「うんうん私は腰抜け……って、なんでそうなるんだ!」
直次、「お前のお父上たっての推薦、
しかも他に適任者がいないなら引き受けるしかないだろ。
失敗したら腹を切ればいいだけなのに、いつまでもウダウダしやがって。
お前がそこまで腰抜けとは知らなかったぜ。」
こう言われて省みたのかムキになったのか、重宗はすぐに京都所司代を引き受けた。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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