紀伊大納言・徳川頼宣は、小堀遠州に頼み、石灯籠を造らせて江戸屋敷に置いていた。
二十年を経てこの石灯籠が評判となり時の大老・酒井忠勝が一見したい、
と申し入れてきたため、
喜んだ頼宣は庭師に命じて庭の模様替えを開始、忠勝を招待する準備を進めていた。
ところが。
完成した庭を見ると石灯籠がおかしい。
庭師、
「当世風じゃないから、石灯籠の火袋広げて直しておきました。」
台無しである。
普通なら後の祭り、庭師は斬った上で恥を忍んで酒井忠勝にありのままを告げる、
となるところだが頼宣は一味違った。
庭師を大いに叱責はしたが、その後やおら家臣を呼び、
「小堀遠州に頼んだ時に物は二つあるのがよいと思い、
同じものをもう一つ作らせていたのだ。
確か苔をつけた風情のものもよいと思い、
紀州の別邸で雨ざらしとしていたはずだ、あれを取り寄せればよかろう。」
と言いつけ昼夜兼行で取り寄せさせた。
紀州で風雨に打たれていた石灯籠の古色蒼然たる風情は、
江戸にあった物をはるかに凌ぎ、
大老酒井忠勝も絶賛、
頼宣は面目を施し家中の者も主の深慮に感服した。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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