豊臣秀吉が、大坂で徳川の侍たちを見た際、
一人の武者に目が止まった。
秀吉「あの栗毛の馬に乗っている侍は誰だ?」
*「はっ、成瀬正成殿という方で、二千石取りの侍です。」
秀吉「成瀬正成、なんとか、わしの家臣にできないものか…。」
正成を欲しがった秀吉は、家康に交渉した。
秀吉「どうだろう、正成をわしにくれんか?
あれほどの侍が二千石では不憫だろう。
わしの家臣になったら五万石やってもよいのだがな。」
家康「お話はわかりました。正成に伝えましょう。」
秀吉「うん、頼むぞ。」
家康がこの話を正成に伝えたところ。
正成「心外ですな。私は石高のためではなく、
あなたのために命を捨てて奉公しているのですよ?
どうしてもと仰るなら腹を切ります。」
家康「秀吉公に仕えて五万石なら大出世ではないか。
お前は私の旗本ではないから私にとってもよい話だ。
なによりも秀吉公に仕えることは私に仕えるよりも大忠であろう。」
正成「無駄ですよ、なんと仰ろうとも私の意志は変わりません。」
家康「ふむ…。」
正成は秀吉の誘いを固辞した。
そして、このことを報告された秀吉は、
「まぁ、そんなことだろうと思ったよ。家康は本当によい家臣を持っているな。」
と、感心したのであった。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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