ある日、家綱は江戸城の庭を散策していた際、とても巨大な岩を見つけた。
家綱はどうにも、この岩が気に入らないらしく、
小姓達に、
「すぐに、この岩をどかせ!」
と命じた。
しかし、どかすとなると城の壁の一部を壊さなければならない。
それくらい大きな岩だった。
小姓達もその様に説明したがやはり家綱は納得しない。
困り果てた小姓達の前に信綱が現れた。そこで小姓達は信綱に相談した。
すると家綱は信綱に、
「信綱、何とかしろ!」
と命じた。
これに信綱、
「上様、これ程の岩をどかすとなると人手も費用も掛かります。
なので無理です。諦めて下さい。」
と答えた。
この返答に家綱も不満だったが、
「知恵伊豆でも無理なのか・・・。」
と、おとなしく引き下がった。
後に、この話を聞いた土井利勝は、
「岩を動かすのが無理なら、
岩の前に穴を掘り、そこに埋めてしまえばよかったのでは?」
と信綱に尋ねた。
すると信綱、
「私もその事には気づいていた。しかし、そうしてしまうと、
上様は何でも自分の思い通りなると考えてしまう。
将軍にも出来ない事はある、という事を教えるために、あえてそのままにしたのだ。」
と答えた。
これを聞いた利勝は、「流石は知恵伊豆」と感心したという。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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