人は、子孫に幸を遺そうと思う☆ | げむおた街道をゆく

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本多忠朝は、老臣の春野某に戯れて、

「武士が力の及ぶ限り高名を立てて大福を得ているのは、
その身一人の栄華を極めるというわけでもない。

皆々がこのような太平の時に巡り遭って、
福を子孫に遺そうと思うのは、万人にとって同じ事であろう。

其の方もそのように思うか。」
と、尋ねた。

これに春野は、

「その通りの御尋ねでございます。

御馬の先の働きも只今の御治世の勤めも、皆、御意の通りです。

自分の子孫をも潰し、忠義の為に身を落ちぶれさせる者は、
古よりめったにない有り様であると存じます。」

と答えた。

さらに忠朝は、

「人々がこのように大切でいとおしい子孫に、

よく教えようとしないのは何事であろうか。

多くの人はその身が大禄、高位になると、自分が下賤だった時を忘れて、
子孫にも栄華に奢らせてしまい、自身が死んで三年も経たないうちに家風は甚だ衰微し、
老功の家来も散々になってゆく。

そんな様子を私は数多く目の当たりにした。

かつて駿府の町人に一子がいた。

その者は子のためと一生稼ぎ、万両を重ねて与えて死んだ。
ところが、子は栄華に育ち、万金を宝とも思わず、五年のうちに尽く他人の宝となった。
ついに子は家を売って乞食となってしまった。

これを町人は愚かだと言う人もいるが、武士も多くはこれに似ている。

人は子孫に幸を遺そうと思うのなら、教えが第一なのだ。」

と言った。

 

この春野には一子がいて寵愛していたので、
忠朝はこのように風刺したのであろうということだ。

 

 

 

戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。 

 

 

 

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→ 酒封じの神、本多忠朝

 

 

 

ごきげんよう!