松平信綱は大下戸であった。対して土井利勝は大上戸であった。
信綱は、
「天下の老中でありながら酒を飲むなど…。」
と心の中で誹った。
ある日、老中たちが神田橋を通った時、
一人の酔っ払いが、ヨロヨロとみっともなく歩いていた。
これを見て、
「良い機会だ。利勝を困らせよう。」
と思った信綱は、
「大炊殿大炊殿、向こうを御覧なされませい、見事な伊達歩みですぞ。」
と言った。
すると利勝は、
「伊豆殿、御嗜みなさい。下戸が酒に酔うことほど、見苦しいことはありません。」
と返したので流石の信綱も返答できずに、困ってしまった。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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