寛永6年5月、利勝は三斎から書院飾りの道具を贈られた。
大名からの贈り物は返品されることが多かったが、
利勝は、三斎の息子の忠利に、ありがたく頂戴いたしますと返事をし、
三斎も大喜びであった。
さて、この年の8月末日から9月にかけて、
家光と秀忠が利勝邸に御成りになることになっていた。
前日、見舞いのため、忠利ら諸大名が利勝邸を訪れると、
忠利一人御成りの間に招かれた。
「なんだろう?」
と不審に思いながら御成りの間に入ると、そこには絵が描かれておらず、
床の上段には三斎の贈った道具がずらりと並んでいた。
息を詰める忠利に、利勝は、
「忠興様の志ですし、見事な道具でしたのでこのように飾らせていただきました。
小堀遠州は部屋の絵について色々案を出していましたが、
せっかくの道具を鑑賞する邪魔になるので、
絵は描かせませんでした。ごらんください。」
といい、
傍らにいた小堀遠州に、
「これで絵を描かせないことに合点が行ったか。」
といったので、忠利は感動し、三斎に喜びの手紙を出した。
三斎は、
「それほど気に入り候つるか! 満足このことに候。」
ともう一度大喜び。
贈り物贈った人をこれほど喜ばせる、利勝の見事な工夫のお話。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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