品川・川崎の間を流れる川を六郷といい、その上流は玉川であり、江戸の南第一の大河である。
また江戸と本所との間に流れる川は隅田川の末にして、これも又城東の大河である。
みな要害第一の設と見える。
であるが、この両川の往来、渡し船を待つ旅人、行客の難儀を計り、
酒井讃岐守忠勝は推して申し上げ、大橋を架けた。
「御用心向き如何か。」
そう言う人があったのを、讃岐守は笑った。
「天下の将軍は、人を以って城とし、人を以って垣とする。
その人を難儀させてしまっては、城にも垣にもならず、何の用にも立たない。
そもそも川を以って敵を防ぐような政道に成り下っては、
江城は一日も守れないであろう。
ただ諸人が迷惑しないように仰せ付けられるこそ、第一の善政である。」
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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