三代将軍・家光が、浅草への行楽の折、休息のために小寺に立ち寄り、茶を所望した。
部屋で待つ間、ふと見ると隣室と隔てる戸に桟が打ってあることに気づいた。
家光は、これを怪しんで、近侍の者に無理やり開けさせた。
すると中には、十七、八の女が座っていて、ゆったりと煙草をふかしている。
「どうしたか。」
と尋ねても、女はうなずいただけで何も答えない。
妻帯の許されない住職が、内密に女性を囲っていたのである。
家光の一行は、茶を飲むと早々に退散した。
その後、大分月日がたって、浅草へ出かけたとき、家光は先だっての小寺を思い出して、
再び立ち寄ってみた。
すると、以前の住職がいない。
どうしたのかと尋ねると、前の住職は、女を隠していたことを将軍に知られたので、
あの後、すぐにどこかへ逃げてしまったという。
「馬鹿な者よ。このような小寺のことまで仕置きしていて、天下の政治ができるものか。」
家光は、苦笑したという。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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