家光は、戦話が好きであり、しばしば家臣を集めて古今の話に耳を傾けた。
あるとき、源平のころの話を聞いたとき、感極まって、次のように語った。
「義経はうらやましい。
彼の元には、弁慶、佐藤継信、忠信など忠勇兼備のものが揃っておった。
あのような者共を股肱の臣として自在に使いこなせたら、
大将冥利に尽きるというものだ。」
御前にいた家臣も、なるほどとうなずき喝采した。
ただ一人を除いて。
彦左衛門、喝采の最中は横向いて知らん振りをし、その後聞こえよがしに、
「今の世にも、弁慶のようなものはいくらでもおりますワイ。
残念なのは、義経のような偉大な君主がいないことの方ですわ。」
と言った。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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