大久保彦左衞門は、戦国の男であるがために、新しい時代に馴染めなかった。
そんな彼にある者が忠告した。
「大久保殿、もう槍を振り回す時代は終わったんだよ。これからは筆の時代さ。
老中の連中はあなたよりも若い奴ばかりだが、挨拶や付け届けをするべきだよ。」
「なんと、今はあのガキどもにおべっかを使わないと、出世できんのかね?」
「嫌な話だがね。みんな我慢しながらへーこらしてるんだよ。」
「お前もおべんちゃらで出世したのかね?」
「全部じゃないがね。半分はおべっかさ。」
「ふむ、ではわしも早速おべっかしてこようかの。」
そして老中宅の門前にやってきた彦左衞門は、
「やあ、○○殿! 実は○○に、出世するためにはあんたらに心にもない、
お世辞を言わないといかん、と教えられてな!
そういうわけで、これっぽっちも思っちゃいないお世辞を言いに来たのだよ!
出世の件、よろしく頼むよ!」
と大声で怒鳴ったのだった。
しかも彦左衞門はご丁寧にも、老中全部の家で、これをやったのだという。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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