亥猪(いのこ)の祝い☆ | げむおた街道をゆく

げむおた街道をゆく

信長の野望、司馬遼太郎、大河ドラマが大好きです。なんちゃってガンダムヲタでもあります。どうぞよろしく。

 

今はあまり行われなくなりましたが、昔は非常に大事にされた伝統の一つに、
亥猪(いのこ)の祝い、と言う物がありました。

 

これは陰暦10月の亥の日、亥猪餅と言う餅を食べ、
万病を防ぎ、子孫繁栄を祈るという行事であります。

徳川幕府においてもこの日、江戸にある大名、旗本はみな登城し、

将軍お手づから餅を下される事になっておりました。
 

当然、彦左衛門も登城し、餅を頂く順番を待っていたのでございますが、

彦左殿、何故かこの時、自分の順番になっても、

将軍から遥か隔たった場所から動きません。
係りの者が、

「彦左衛門、御上壇まで進み候へ!」

と促すのですが、彦左衛門は聞こえなかったかのように平伏したまま。

これに家光公、

「彦左衛門も年老いて、耳が遠くなったのであろうか?」

と思い、餅を彦左衛門の傍まで投げよこしました。
 

ところが、家光が餅を投げた瞬間に彦左衛門、やおら立ち上がり上壇の際まで進み、
頭を下げ上様の前で両手を上げて畏まりました。
そこで家光公、こんどこそ手づから彦左衛門の手に、紅白の餅を下されたのです。
 

そうして彦左衛門、下がる途中で先ほど投げられた餅を拾い、

上様に御礼申し上げ御前を退きます。

さて、下がった先の溜り場には、先に下がった旗本諸侯が集まり、

色々と雑談などをしております。
そこに現れた彦左衛門、両手それぞれに二つの餅を高らかに掲げ、

「どうじゃ! 亥猪の餅を二重ね頂戴いたしたのは、我一人であるぞ!」

と、見せびらかし、大いに自慢をいたしたということです。

ちょっとした策略で、御餅を見事二重取りし、諸侯達に見せびらかす。
一体これが自慢になる事なのかどうかはともかく、

老いて直矍鑠たる老勇士、彦左衛門さんでありました。

 

 

 

戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。 

 

 

 

こちらもよろしく

→ 三河物語、大久保忠教

 

 

 

ごきげんよう!