駿河にて徳川家康が、大久保彦左衛門と久々に会ったので、
四方山話を始めたことがあった。
「関ヶ原の戦の後は世も静謐になった。
まことに、わしにとってあの戦は死生の分け目であった。
我が方は挟み撃ちにされそうになったが、
敵は一戦に打ち負けて、
右往左往に逃げる有様は見苦しいものだったな。
それに比べて我が方は命を惜しまず、功を争わずまことに潔いではないか。
のう彦左衛門よ?」
(なっげえ話だなあ)
彦左衛門は、長話にうんざりして帰りたくなった。
「なるほど一溜りに敗北とは見苦しいですね。
しかし上様が小山に御着陣の折、伏見より上方が敵だらけになったとの報があった時は、
上様の御顔も真っ青になり、
諸将も妻子を取られたと聞いて顔を青くしておりましたが、
太平となり青い御顔も元通りになられたようですから、
まことに御運強くめでたいことです。」
嫌味を言われた家康であったが笑って、
「彦左衛門はやく休め。」
と言って彦左衛門を下がらせた。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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