加賀藩の御料理人である長谷川徳左衛門は、
先年、京に向かう前田利常に従い東海道を下っていたが、
関ヶ原宿に泊まるその日の道中、道端ではこべが見事に成っているのを見つけ、
これを乗っていた馬に挟み進んだ。
さて、関ヶ原宿に着くと、そこにはろくな食材がなかったため、
長谷川は焼いた干鱈に先に摘み取った、
はこべを加え入れて、汁を作り利常に差し上げた所、
これを大変気に入られ、度々お替りをして召し上がった。
そして長谷川を御前に召し、
「殊の外よき汁であった。どうしてこのような料理を思いついたのか?」
と聞いた所、長谷川は、
「私が先行して進んでいた所、道際に見事なはこべを見つけました。
関ヶ原宿には多分良い食材は無いだろうと思ったので、
このはこべを取り乗り掛けの馬に付けて、こちらに到着した所、
案の定良い食材はありません。ですので先の御汁にしたのです。」
そう申し上げると、利常は感心し、
「自分の役儀をよく心得ており、大変奇特である。」
と言って御箪笥の中から金子を、包のまま下された。
その包の中には金子が、一歩五十八切(一歩金は小判の4分の1)も入っていた。
後で長谷川徳左衛門は、
「御汁一つ料理して、たいへんな金子を貰ったよ。」
と大いに自慢していたそうである。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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