越中に置いて、佐々成政と前田利家が争っていた頃のことである。
成政は越中と加賀の国境の要所要所に多くの砦を築き、
そのうちでも最も見晴らしが効き要害でもある、
舘村の城山の砦に入った。
ところがこれを知った前田軍は、城の南側にある南谷川を堰き止め、
このため城山の砦は水に大いに困ることとなった。
これに佐々成政は水源を求め、城山の峰の西に、湿気を多く含んだ場所を見つけた。
そこで成政、槍を持つと岩間に向けてそれを一気に突き立てた!
すると、
ドォォォォ!
槍を突き立てた場所より、滔々と水が湧き出てきたではないか!
このとき奥方もその近くを突き、そこからも水が湧き出した。
成政の家臣たちは大いに悦び、競って喉を潤した。
しかし前田軍に圧迫により、成政は結局この城山から撤退する。
この時、成政は城山の東にある舘村の民家に立ち寄り、
あの水源に突き立てた槍を取り出すと、
「我々はこの槍のお陰で命の水にありつくことが出来、
家臣一同の命を守ることができた。
だから、この槍は戦に使うことは出来ない。
これは大切な槍なので、おまえの家に預けていく。」
と、それを置いていった。
やがて佐々成政は没落し、前田家の時代となる。
舘村のあたりは成政の見つけた水源のお陰で多くの田畑を開くことが出来た。
成政の突いた所は男水、奥方の突いた所は女水、
その地は『槍之先の水湧き』と呼ばれた。
前田藩は何度も佐々成政の槍について捜索を行ったが、
槍を預かった家では、
これを隠し通し、槍を水の神として、大切に伝え守った。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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