天正10年(1582年)、
森長可は東濃の反抗勢力征伐の為の戦いを続けていたが、
夏ごろには、斎藤玄蕃の守る加治田城という城と対峙していた。
しかしながら「却敵城」の異名を取るこの加治田城、なかなか一筋縄では行かない。
森軍ははっきり言って攻めあぐねていた。
業を煮やした長可はついに自ら出撃。
指揮を執るべく前線部隊へと合流すると、加治田城攻略への策を考える事になる。
加治田城兵は加治田城へと攻め登る間道、要害の至る所に配置されており、
まともに攻めれば、待っていましたとばかりに攻撃を加えてくる・・・。
そこで長可の考えた作戦というのは実に単純明快であった。
「正面突破」
である。
要するに馬鹿正直に間道など使わずに道なき道を正面から突っ切り、
加治田城を一気呵成に叩くという作戦だった。
しかし、当然の如く山城において、
人が攻めてくる訳が無いと想定されている場所から攻め登る訳なので、
どうなるかは分からない。
一応は地元民からの聴取ぐらいして、踏破した者が誰か居たのかもしれないが鎧武者が登り、
しかも城を落とすというのはやはり前代未聞である。
しかしながら鬼武蔵が言うなら家臣は首を縦に振るしか無い。
直ちにこの登山作戦は実行に移された。
そして、森軍は気合で道なき道を踏破し、加治田城へと取り付くことに成功したのだった。
そして栄えあるこの城攻めの一番槍は・・・。
長可「この城は、もらったー!」
門番「ぬわー!」
登れると豪語した鬼武蔵が家中髄一の体力を見せつけ、
そのまま家臣を置き去りにし一番槍を取った。
その後、山攻めには慣れている森軍の兵士たちも続々と山道から現れ、
加治田城へと雪崩れ込む。
全く想定外の所から現れた森軍の攻撃に、
殆ど間道や要害への配置に回していた加治田城は、
敢え無く陥落してしまった。
こうなればもう策は必要ない。
隠れている場合ではなくなった加治田城兵が、
城を取り返そうと包囲しに来た所を、
普通に道から攻めてきた森軍の後詰めが寄せれば、
素敵なサンドイッチの完成である。
こうして加治田城は森軍の手に落ちたのであった。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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