天正十年、織田信忠は、兵五万を率いて武田勝頼を攻め滅ぼし、
信濃、甲斐、駿河、上野等を尽く平定した。
織田信長はたいへん喜んで、
福富平左衛門貞次を使いとし、信忠に父・信秀の遺刀を授けて、
「お前が出陣すること、わずかに三十日で大敵を滅ぼし、
数国を平定したことは、
先祖を辱めない活躍というべきである。
今年の冬には必ず天下兵馬の権を譲ろう。
いま家伝の宝刀を授与してしるしとする。」
と、言った。
信忠は畏まって、たいへん喜びながらも、天下を譲ることについては、
「いまだ若輩ですので、思いも寄りません。」
と、返答した。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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