織田信忠は、叛乱した松永久秀を攻めて焼殺し、
十三日に兵をおさめて京に帰った。
朝廷は大納言実枝を信忠邸に遣わし、
その功を賞して従三位中将に任命し、昇殿を許した。
しかし、これを信忠は、
「朝恩の厚いことはたとえようもありません。
しかしながら父に告げずにお受けすることは、
臣下の道ではありません。」
と言って固辞した。
信忠は実枝が再三すすめても勅命に応じなかったので、
帝はその控え目で、
思いのままに振る舞わないことを叡感した。
しばらくして信忠は使いを父信長のもとへ送りこの事を告げた。
信長は、
「久秀は鍛練の老将であったが、
お前は年若くしてわずかなうちに、これを誅滅した。
この功は大きなものである。
ぜひとも詔を奉じて官爵をお受けせよ。」
と言った。
ここにいたって信忠は、かたじけなくも謹んで勅命を受けた。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
こちらもよろしく
ごきげんよう!