道具持ちの弥兵衛☆ | げむおた街道をゆく

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加藤嘉明が、召し使うものに、弥兵衛という道具持ちがいた。

ある時、彼が預かっていた嘉明の槍から、銀の金具を外して売ってしまった。
後でこの事が発覚し、弥兵衛は打ち首と言う事となった。

このとき嘉明、弥兵衛に言った。

「よりにもよって、何と言うものを盗むのか。

槍は武士が第一に大切にするものだ。
その上、お前を信用して預けた道具から盗むとは、これは重罪なのだぞ?
しかし…、おぬしに家族は有るか?」

「はい。母と妻と、子が息子と娘の二人、甥が一人おります。」

「お前の禄はいかほどだ?」

「三両二人扶持でございます。」

義明、これをじっと聞いて。
「…二人扶持で六人の人間を養うには、盗みでもしなければ無理であろうな。」

そう言って弥兵衛の罪をゆるし、さらに彼の子のうち男子は草履取りに、

女子は奥方に奉公させ、甥は足軽にさせた。
 

こうして罪を犯したというのに、弥兵衛一家は返って幸せになり、

彼の朋輩達も大いに羨んだとの事である。

悪い事をしたわけではありますが、罪を憎んで人を憎まず。
苦労人の加藤嘉明らしい、人情味溢れる採決、のお話。

 

 

 

戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。 

 

 

 

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→ 沈勇の士、加藤嘉明

 

 

 

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