勘助の上杉憲政分析☆ | げむおた街道をゆく

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ある時、武田晴信が、山本勘助に、このようなことを問われた。
「他国を占領した際、その国の侍達を皆斬り捨てるか追放をし、

一人も召抱えることなく元からの自分の配下達だけに、

その国の知行を分けるという事はいかがであろうか?」

勘助、これに答えるに、
「それはその大将が手柄を誇り、将来への配慮もなく、

外聞を気にしての浅はかな判断だと申せましょう。
その措置には先ず、国持ち大名として無くてはならない慈悲の心がかけております。
これでは天より憎しみを受け、必ずや災いを呼ぶでしょう。
私もそのような例を、いくつも見聞きしております。」

又、晴信は問うた。
「関東の上杉憲政の様子はどうか?」

「はい。憲政は新規の人を召抱え大切に扱います。

しかしこれは、そう言う外聞を大切にすれば、
各国各郡から四方にこの事が宣伝され、諸国から大いに人が集まってくることを、
期待してのものです。
人多く集まり憲政に奉公すれば、関東管領としての上杉憲政の威光が上がり、
北条氏康やその支配下の者たちもこれを恐れる。

そう言う目論見の元に、大身の親類、或いは遠国の牢人がやってくれば、

これを抱え厚遇しているのです。
このため上杉家中では新参の者が幅を利かし、知行を過分に取り、働いております。

ですが、そのせいで譜代の人々で、上杉家のため熱心に働くものは、

十人に一人もいないという有様になっております。」

晴信は、これを聞いて笑い、
「憲政は後先を考えず新参を厚遇するため、古参の者は恨みを抱いて役に立たず、
新参は思い上がって主君を軽んじているため、これも役に立たない。

それで双方忠功を怠る。
そんな事だから北条氏康の少数の兵に切り崩され、合戦に敗れるのだ。

憲政のやり方は、下手糞な医者が工夫を間違え、薬を毒にしてしまったようなものだ。
『薬は人を殺さぬ、医者が人を殺す。』

と言うやつだな。

大将の人の使い方が悪ければ、家臣もまた悪くなる。
世の中にはそれを勘違いをして、家臣が悪くなった事を、

家臣の責任だとする者達がいるが、
この武田晴信は、絶対にそのようには考えないと、御旗盾無に誓おうぞ。」

と、仰った。

この晴信の言葉に、勘助、かたじけなく、感じ入ったとの事である。

 

 

 

戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。

 

 

 

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→ 啄木鳥の戦法、山本勘助

 

 

 

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