大将というものは、大きなことも小さなことも、
小人の善悪をよく見知って置かなければ、
何の意味も有りません。
召し使う侍たちであっても、義心直道の者も、軽薄佞人のたぐいも同じように見られ、
悪しき士に家権を取らせてしまえば、軍合戦するまでもなく、
平穏な世の中でも、その家は破滅してしまうでしょう。
老若によらず、心のしれた親しい者を御取立すべきではありません。
第一、佞人は人を妬み、心中賤しく人をたばかり、諸事に付け悪口を申すものです。
武田信玄が甲州にあった頃、三河牢人の山本勘助と申す片端者が、
軍の道をよく知っている者ということで、
信玄はこれを召し抱えました。
この新参者に対し、家中では悪口に、彼の体を見て、山本を「半体」と呼び、
城中においても後ろ指を指して笑い草にしました。
この事は目付けが、信玄に報告しました。
信玄は殊の外に立腹し、笑った人々を、その一門まで追放したのです。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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