徳川家康が将軍だったころ、
結城秀康が、父・家康の命で江戸に赴いたことがあった。
品川まで来ると、なんと徳川秀忠がわざわざ江戸城から出迎えに来ていた。
「兄上、よくぞお越し下された。」
「わざわざのお出迎え、痛み入ります。」
挨拶の後、さあ、江戸城に出発となったが、秀忠の輿は動かない。
「兄上、どうぞお先に。」
だが、秀康は上杉景勝との席次譲り合いにも見られるように、謙虚な人柄であった。
「何を申される。あなたはお世継ぎではないか。あなたより先にはいけない。」
ところが、秀忠は、景勝と違い、「それなら。」といえない男だった。
「兄上を差し置いて先に行くなど、長幼の序にもとります。」
二人には、頑固で意地っ張りな徳川家康の血がしっかりと受け継がれていた。
結局、二人は江戸城までの道のりを延々と譲り合いながら進み、
街道を通る人々は、大いに迷惑したということである。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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