秀康卿が、ある時、鷹狩りに出たところ、
木履をいくつも背負って、よろよろ歩いている座頭がいた。
先払いのものが脇へ追いやったが、秀康卿一向が通っている最中に、
その盲人が秀康卿の御駕籠に近づいたので、
秀康卿、
「汝はどこに行く者ぞ。」
座頭、
「われは座頭の会所に参るのですが、今朝、雨が降り、道が乾いたため、
座頭衆の木履を草履と取り替えて戻るところなのです。
殿様のお通りということで、
あそこの藪に追いやられてしまい、思いがけず時間を費やしてしまいました。
こうなってはたとえ石籠詰めにあっても、
やむをえないと行列をつっきったのです。」
と泣く泣く申し上げた。
秀康卿が、
「盲目になるだけでなく、同じ盲人からこき使われて、
履き物まで持たされるとは不憫なことだ。
汝が殿様と呼ぶは我のことである。
汝を検校にして領内の座頭を手下にしてやろう。」
と仰られたところ、
盲人はからかっていると思い、
「殿様はすでにお通りになったでしょうに、嘘を言う方ですな。
たとえ殿様のはからいでも御学問所はさておき、四分衆と肩を並べることも無理でしょう。」
とつぶやいて慌ただしく通り過ぎた。
そこで秀康卿はすぐに君命を下し、その座頭を検校とした。
こうして御国中の座頭は彼に礼を取ったという。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
こちらもよろしく
ごきげんよう!