越前において、結城秀康が城を出て、
温泉に入りに行った事があった。
これに出発する前、
秀康は見送りの家臣たちを一人づつ呼び、声をかけた。
ところがこの時、どうしたわけか片倉武兵衛だけは呼ばれず、
声をかけてもらえなかった。
武兵衛はこれがあまりに口惜しく、
面目を失ったと、切腹し、果てた。
武兵衛の切腹を知った秀康は驚いた。
「ついうっかりして、呼ぶのを忘れてしまった。
しかし武兵衛の事を気にかけていない、訳ではなかったのに!」
深く後悔した秀康は、武兵衛の跡目を取り立て片倉家を存続させた。
そしてこの事を生涯、自分への重い戒めとしたそうである。
この時代、武士の面目とは、
生き死にに直結する重大な問題であったのだ、と言うお話。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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