大坂冬の陣勃発の時、黒田長政、福島正則も、大坂攻めの御供を望んだ。
その頃は、未だ太閤秀吉取り立ての大名が多かったが、
その中でも、この両名はとりわけ武功の勇将であったため、
人々も様々に気遣いしていた。
そこで本多佐渡守(正信)が、両将を茶の湯に事寄せ饗応し談じた。
「まことの事かどうか知りませんが、
今度の大坂のことで、御供の望みがあると承りました。
これが本当であるとすれば、心得がたい事です。
何故なら、あなた方が秀吉卿莫大の恩顧・御取り立ての身であると言っても、
当家において関ヶ原の時分、
まさしく御忠節を申し上げた故に、大国を下され、
以降、誠に二心無く御奉公の御志をなされていると見ています。
さりながら、大坂の城には秀頼が立て籠もられております。
先主・秀吉の息男が在城しているのを、時に従う習いであるからと、
寄せ手に加わり攻められても、人は良いようには思わないでしょう。
また、だからといって寄せ手に加わりながら、成すこともなく居るのも、
後ろめたいではありませんか。
ここを以て察するに、今度の御供の願い、非常に愚案であると言えるでしょう。
しかし各々に、特別なご存分もあるのでしょうか?」
この言葉に両人屈服し、
「されば、御辺を以って、御留守に任じて頂けるよう申し上げていただきたい。」
そう申したという。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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