家康公が、ある時、鷹野へと御出でになられたが、
今日は終始養生の為の出御であるから、
何れも御前をはばからずに休息するようにとの事で、
野に幔幕をめぐらせた。
上様にも、お弁当を召し上がっていただこうと、
御小姓衆が重箱を持参していたのを、本多佐渡守が見つけ、
「これは御慰めの御成に用いるべき器ではない。
かような品に華美を尽くしては、
御供の末々までが見習って、奢侈の始まりとなるだろう。
天下の政務をとられる御身には、以ての外である。」
と言い重箱を、取り捨てられた。
家康公は、これをもっともと思われたのか、いささかも機嫌を損ずること無く、
御供の者が持参した握り飯を取り出させて、召し上がられたと言う。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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