ある時、伏見城の台所で、使用人による盗みが多発していた。
この事に徳川家康は、
「けしからん!」
と、たいへん腹を立てていた。
これを見た本多正信は、
「それはめでたいことです。
殿が天下一の大名となり、方々から貢物が届くようになったので、
それを盗む者も出たのです。」
と、この様に宥めたという。
また、江戸幕府が成立した頃、
家康が江戸に滞在する大名達の風紀を取り締まろうとした際にも、
考え直す様に進言した。
正信曰く、
「江戸での生活が面白くないものになってしまうと、
大名を参勤させるのが難しくなり、
大乱の元となります。
また、一代で何もかもお決めになられては、後の将軍のやる事がなくなり、
その威光が増しません。」
というもので、
これを聞いた家康は、
「お前の考えは実に臆病で面白い。」
と笑って了承されたという。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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