天正十九年十二月二十八日、近江中納言・秀次公は、関白に任ぜられた。
その礼として家康公から井伊兵部大輔直政を遣わされた。
その時、秀次公は、囲碁をされていて、直政を呼んで物語をされた。
「昔、私が三好孫七郎といったときは、直政も無官で万千代と申していたな。
会合して碁を打ったが、その時は、直政は碁が強くて私は弱かったものよ。」
その後の話に事寄せて、尾張長久手の合戦に、
直政に打ち負けた事を思い出して、
それとなく、
「今、私と直政とでは昔とは手合わせは違ってくるだろう。
私も忝くも関白に任ぜられたのだ。
勝負も大いに変わるはずだ。」
と笑いながら御申されると、直政は、
「その時は、拙者とて無位無官の万千代。
只今は四位の侍従に叙任されています。
手合わせも、それほど昔と変わらないでしょう。」
と、恐れること無く答えた。
意地の有る、申し分といえる。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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