ある十五日の夕方、徳川秀忠が手水を使おうと水を取り寄せた。
水の中には、今上っている月がうつっている。
そして水の中の月は、秀忠が手を入れると二つに分かれた。
それを見た秀忠は、
「今まさに天下は割れようとしている。
それを割れないようにするのは、自分次第のことであるが、
世にも心憂いものは、天下取りの身の上である。」
と言って涙を流した。
秀忠が、次男・徳川忠長を、甲府に押し込めたのは、
それから間もなくのことであった。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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