将軍・秀忠は、真面目な性分で、一度決めたことは、まず変えなかった。
例えば辰の刻に鷹狩に行くと決めたら、食事中だろうが鷹狩に出掛けた。
こんな次第なのである日、近習が気をきかせて、
秀忠が食事を終えるまでは、時計が鳴らないようにした。
これを知った井伊直孝は、近習達を呼び出して、
「貴様らは主君に仕えることが、
どういうことかわかってない。
主君は天下が正しく治められるのを望んでおられる。
貴様達はそのことを汲んで行動しなければならんのに、
偽りごとが主君の御心にかなうと思っているのはどういうことだ。
俺の言っていることがくだらないことなんて思うなよ。
こういうことが続けば、上が正道を望んでいるのに下がわからなくなり、
上を怨む輩が現れて、姦臣を産む土壌となるのだ。
今後は時計を遅らすなんてことはしないで、
早めに食事を用意して、予定の時間より早く終わるようにはからえ。
こういう小事が国家にとって重要なのだ。」
と言って近習達を戒めたという。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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