徳川秀忠の時代、北の方角に夜な夜な彗星が現れた。
世の人はこれを見て乱が起こると言い合った。
そんなある時の御咄で、秀忠は、
「下々はこの星を乱の兆しと疑っているが、いずれもよく心得よ。
広大な天下に星ひとつ現れたところで、どこの国に該当するのかなど誰にも分からない。
必ず自分の国が該当して乱が起こるなどと思うのは愚かなことだ。
それに、たとえ善くても悪くても、天の気に現れることを、
どうして人間に除くことができるだろう。
これはみな愚か者の申すことである。」
と言った。
その明君の心掛に感じぬ者はいなかった。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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