3人の近臣☆ | げむおた街道をゆく

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文禄の終り頃、宇和島七万石の大名となった藤堂高虎は、

家臣の居相孫作・服部竹助・大木長右衛門を呼んだ。

居相孫作は、高虎が羽柴秀長に従い、中国攻めに参加していた頃に召抱えた、

但馬の土豪の次男である。
 

服部竹助は、そんな高虎に憧れて実家から飛び出し、

そのまま高虎のもとに転がり込んだ同郷の士である。
 

大木長右衛門は、高虎が転々と主君を変え、

近江をさまよっていた頃から若党として仕えていた男である。

いずれも高虎が無名に等しい頃から従っている、藤堂家最古参の男たちであった。
「ようやく、この高虎も大名としてデカい顔のできる身分になり、

お前たちの苦労に報いることのできる立場になった。
そこでだ。この際、お前たちにそれぞれ千石を支給しよう!」

笑顔で宣言した高虎に、孫作は不満そうな顔を向けた。

「な、ならば千五百石でどうだ!?」
竹助が、哀しそうな表情を浮かべてうつむいた。

「うぬぬ…ならば二千石……。」
「殿。」三人を代表して、長右衛門が不機嫌な声を上げた。

「なんだ!何が不満だ!」

「千石も頂戴したところで、わしらに十人分の働きはできませんや。

そんなら、わしらに下さるつもりの三千石で、
百石の侍を三十人雇って下され。」

大名・藤堂和泉守の重臣として多大な知行を管理し、部下を使うことに追われるよりも。
軽輩でも良い、高虎の側近く仕え、

侍・藤堂与右衛門の背中を追いかけていたい、というのだ。
「お、お前たち…。」
三人の知行は元の六十石で据え置かれ、

役目に応じて臨時収入の合力米があてがわれることになった。

その後、さらに高虎は出世し、伊賀・伊勢三十二万石の大大名となった。

高虎は、また三人を呼んだ。
「これだけ家がデカくなると、古参にそれなりの待遇をせにゃ、若い者に示しがつかん。

で、二千石でも三千石でも…。」
「そんなら、茶なんぞすすって遊んで暮らせる程度に、もらっときましょうかね。」

三人は高虎の言葉をさえぎって言い、結局二百石以上は受けなかった。


ところで、この三人が『兎角拾人の働、壱人にてハ難仕』男たちだったかというと、

大木長右衛門と居相孫作は、
高虎の各地での城普請の際、普請奉行を務めた。

服部竹助に至っては、藤堂藩の飛び地二万石の代官を任された。
 

それでも一生を少禄で過ごし、高虎の側近く仕えた。

そういう男たちだった。

 

 

 

戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。

 

 

 

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→ 下天を謀る・異聞、藤堂高虎

 

 

 

ごきげんよう!