大阪冬の陣でのこと。
藤堂高虎の部隊に、岸本某という射手がいたのだが、
ある日、陣地を離れなんと大阪城の堀際にまで行って、そこで火矢を連発した。
ところが、この時ふとしたはずみで弓を堀に落としてしまった。
堀の深さは一丈あまり(約3メートル)、大阪城からの攻撃もあり、
これを取るのは誰が見ても、甚だしく難しいものであった。
ところが、この岸本某はゆっくりと自分の甲冑を外すと、堀を降り始めた。
城中からは、そんな岸本に霰のように矢弾が集中した。
これには味方の者達も驚き、岸本の所属する部隊の隊長や同僚が駆け寄って、
「帰って来い! 帰って来い!」
と叫んだが、岸本は聞かずついに堀の底に降り弓を取り戻すと、
再び上がって甲冑をつけ、
そしてゆっくりと歩いて陣地へと戻った。
彼の体には、傷ひとつ付いていなかった。
これを見た者達は驚愕し、「あいつは神だ!」と言った。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
こちらもよろしく
ごきげんよう!