大阪冬の陣でのこと。
天王寺口では城の中から、彼らを包囲する攻め手に向かって、
こんな言葉を投げかけた。
「大御所(徳川家康)が御馬を我々に向けられたので、華々しい軍勢を見物いたすぞ!」
挑発である。さて、この言葉に反応したのは藤堂高虎の陣であった。
藤堂陣からは、こんな言葉を返す。
「見物くらいがお前たちにはお似合いだ!
お前たちのような牢人共は金銀に目がくらんで籠城したが、
金を受け取ったからにはさぞかし命は惜しいだろう。
そんな軍は比丘尼にも劣る!
命が惜しければ逃げ道をこしらえてさっさと落ちろ牢人共よ!
今回は特別にその広言を許してやろう!」
これに城方答えるに。
「天下分け目の戦に、そんな雑言は無用である!
お前たちは、忠臣二君に仕えずという侍の本分を知っているか!?
我々牢人は今まで、違う主君に仕える事を潔しとしなかったために、
牢人をして時節を待っていたのだ。
お前たちの主人和泉守(高虎)のような内股膏薬の間に合いの如き者に、
我らが如き本来の武士が成ることは無いのだ!
命が惜しければそこから逃げこの城に入れ!
その生命、助けて取らせるぞ!」
主人高虎を馬鹿にされたこの言葉に藤堂陣の者たちは激怒、
一斉に鉄砲を打ちかけたが、
これに城の中からはどっと笑い声が上がった、という。
大阪冬の陣における、挑発合戦のヒトコマである。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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